銅は人類が初めて使った金属です。紀元前8000年頃の新石器人が最初と言われており、地表に顔を出していた銅鉱石を偶然見つけたようです。紀元前6000年以降になると、人類は銅を火で溶かして形をつくる鋳造技術を発見。岩石に含まれた銅を取り出す方法も発見しました。以降、人類は銅を使っていろいろなモノを作るようになり、紀元前2750年頃のエジプトのアプシル神殿では、給水管に銅が使われていました。
日本で銅が使われたのは紀元前300年頃の弥生時代、朝鮮半島経由で中国から輸入された青銅器だと言われています。708年には日本でも大規模な鉱脈が見つかり、日本最初の貨幣である和銅開弥や東大寺の大仏も、この時代に銅で作られました。
銅は金属の中で、常温では銀に次いで2番目に電気を通す金属です。電気抵抗が小さく電気の流れを邪魔しないため、電線などに適しています。また、銅は熱伝導性にも優れた金属です。
これ以外の特長としては、さまざまな機器や製品に加工しやすいほか、抗菌性もあり、O157に対する抗菌効果も確認されています。さらに、銅の表面にできる酸化皮膜が腐食を抑える効果もあり、古代より水道管や、日本では神社仏閣の屋根に使用されています。
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一般社団法人 日本銅センター「銅の抗菌性」
数々の優れた特性を有する “銅”は、活躍するステージも多岐にわたっています。
まず挙げられるのは、電線をはじめ、大型発電機やリードフレーム(注1)など、電気を通す機器用素材です。また、腐食しにくいため給水・給湯用配管、屋根用建材としても活躍。抗菌効果があることから排水溝の受け皿や鍋・ザルなど、家庭内でも広く使われています。
一方、熱伝導性に優れる特性を活かし、エアコンや冷蔵庫の伝熱管やヒートパイプ(注2)、意外なところでは人工衛星や宇宙船のヒートパイプにも採用されています。宇宙船の温度差(太陽光線の当たる側は高温で反対側は零下となる)の均熱化と、地球帰還の際の摩擦熱による燃え尽きを防止するために用いられています。
銅の特性の中でも、“熱が伝わりやすい”という強みを発揮しているのが「銅管」です。その代表例が、私たちの生活に欠かせないエアコンの冷媒管。内面に溝をつけた銅管(内面溝付管)が使用されています。これは1970年代後半に登場した銅管であり、溝をつけることによって管の内表面積を約1.5倍にして、熱を伝わりやすくしています。
また、近年では地球環境に対する意識の高まりから、フロンに代わりCO2などの自然冷媒を使う熱交換器が誕生しています。その熱交換器に使用される銅管は高い圧力に耐えうる強度が必要とされますが、当社の開発した高強度銅管が広く使われています。このほかにも銅管は、熱効率の高さからパソコンやゲーム器のCPU冷却装置に使われています。
(注)2007年現在(一般社団法人 日本銅センターより)
銅管の原料は、銅鉱床と呼ばれる場所から掘り出される銅鉱石です。世界の銅鉱石の総埋蔵量は6.5億トン、年間使用量は約1,400万トンであり、このまま消費を続けるとあと数十年しか採れない計算になります。ただし、世界にはまだ見つかっていない鉱脈も数多くあると言われています。最近では鉱脈の発見技術や人工衛星を使った探査技術が発達したことから、銅鉱石の生産量は増えつつあります。
しかし、資源保護の観点からも、リサイクルは重要なテーマです。その点、銅は早くからリサイクルシステムが確立しています。スクラップはもちろん合金からも銅を回収して再利用しています。ただし、家電製品やエレクトロニクス関連製品については小型化や材料の複合化が進む中、純度の高い銅を選別・回収することが難しくなっています。今後は、選別技術の高度化などを通じて、さらにリサイクルを徹底していくことが求められています。